心理カウンセリング①
前回は診察について説明をしました。
では、カウンセリングはどうでしょうか。
前回のブログでも少し触れたように、カウンセリングという言葉そのものは
自由に使うことが出来ます。美容カウンセリング、学習カウンセリング等、
資格がある場合もあれば無い場合もあり、カウンセリングと言えば、一般的
には相談を受ける行為ということで使われています。
我々が行っているのは、その中の心理カウンセリングという領域ですが、
心理カウンセラーとはだれでも名乗ることが出来ます。
しかし、その中でも以前もブログで触れた臨床心理士、公認心理師は、
法律的に、その資格を持たないものは名乗ることが出来ません。
臨床心理士と公認心理師は国家認定資格と国家資格の違いはありますが
(詳しくは当ホームページブログの臨床心理士と公認心理師についてを
ご参照下さい)こういった資格を名称独占(その資格を持った者しか
名乗ることができない)と言います。
なので、臨床心理士、公認心理師と名乗っている場合は、その個人が
資格を持っていることが前提になります。
Lear More診察とカウンセリングの違いについて
以前、「カウンセリングとは」の記事を掲載しましたが、いくつかご質問を
いただいていたので、4回に分けてもう少し詳しく掲載していきます。
意外と多く受ける質問として、カウンセリングと診察の違いがあります。
それは質問とは違う形であっても、診察とカウンセリングに違いを明確にご存じない方が、
診察のつもりでカウンセリングを希望される場合もあります。
なので、この場をお借りして、カウンセリングと診察の違いについてお伝えできればと思います。
まずは診察ですが、これは医師のみが行う医療行為です。
例えばAさんが医療機関を受診し医師の診察を受け、診断を下し、治療します。
これら太字で書いた部分は法律(医師法)によって医師としか行うことが出来ない医療行為で、
弁護士等と同じ業務独占(その資格を持った者しか出来ない業務)の資格となります。
なので、もし発達障害やうつ病、適応障害といった診断が必要な場合は、医療機関を受診して、
医師に診察を受けていただき、診断を受ける必要があります。
また、医療行為である投薬治療(特定の薬を処方する行為)も、診察で医師しか行うことが
出来ません。もちろん、診察の中で患者の相談を聞き、指示や指導、アドバイスを行うと言った
カウンセリングと重複する部分も多くありますが、カウンセリングとの明確な違いは
医療行為かどうかというところにあります。
ただ、国家資格として公認心理師ができたこともあり、医療施設や医師の指示で行う
カウンセリングも医療行為の一部として扱ってよいかもしれません。
次回は「心理カウンセリング①」です。
Lear More自分史づくりとカウンセリング
先月になりますが、このようなニュースがありました。
もともと認知症予防として活用されていた自分史づくりが、
就活での自己分析や、自己PR、社員研修などに役立つとして注目されている
といった内容でした。
実際に「自分史 就活」で検索すると自分史作りを紹介する様々なサイトがヒットします。
いくつかのサイトを見てみると、自分史づくりの目的は「自分の過去を振り返り
自分の行動パターンや大事にしている価値観を見つける。再認識する。」ことのようです。
さらには、そうすることによって自分の強み、アピールポイントを見つけることができれば
そのまま就職活動に活かすことができるわけです。
確かに人は、自分がこれまでどんな経験をしてきて、それが自分にとってどんな意味を持って
いたのかといったことは、案外深く考えずに生きてきているものです。
「自分史づくり」を通して、自分の意外な行動パターンや価値観にはじめて気が付くというのは
決して珍しいことではないでしょう。
このような「自分史づくり」は、カウンセリングのはじまりと似たところがあるかもしれません。
カウンセリングでも、最初の数回のセッションをかけて、その方のこれまでの歴史をお聞きして
いくことがよくあります。これはただ儀礼的に昔の話をしてもらっているわけでも、過去に問題が
あるせいだと決めつけたくて聞いているわけでもありません。
これをするのにも様々な理由があるのですが、「これまでの行動パターン」や「人との関係の持ち方
のパターン」「大事にしてきた価値観(生き方のパターン)」を知っていくというのは、
その理由のうちの大事なひとつです。
ただしカウンセリングの場合は、そうすることによって自己PRを作成するためではなく(そうである
場合もあるかもしれませんが)その情報をカウンセリングにやって来られた方が「今、現在」困って
おられる事柄の内容と照らし合わせながら考えていくことに活かしていきます。
現在の困りごとが過去のパターンと意外なほどよく似ている、ということがままあるからです。
そのように最終的な目的には違いがありますが、「その人のパターン」を知っていくという点では
就活での自分史づくりとカウンセリングのはじめに過去のお話を聞くことは共通している部分が
あるのだと思います。
その意味では、カウンセリングの数回のセッションはカウンセラーと一緒に自分史づくりをしている
といった見方もできるのかもしれません。
Lear More考え方のクセ①「べき思考」
認知行動療法は、問題やストレスを増大させている認知(=考え方)の癖、行動の仕方の癖をみつけて
それをよりストレスや問題の少ないものへと変化させていく方法です。
認知行動療法についてご存じの方は「認知の歪み」という言葉をご存じかもしれませんが、
これは「問題になることが多い考え方の癖」ということです。
その中の1つが「べき思考」です。
「ああすべきだ」「こうするべきだ」「こうするべきではない(してはいけない)」と、「べき」と言う
言葉を使って自分の行動や相手の行動を批判したり、縛ったりする考え方です。
例えば「人に良くしてもらったら、自分もそのようにして返すべきだ」という考えはとても
素晴らしい考えです。
みんながそのように考えて生きていくことができれば、世の中はもっともっと良くなっていくことでしょう。
しかし、もしこの考えが「べき思考」になって自分の中の絶対に守らなければいけないルールと
なっていたらどうでしょうか。
常にこの考えの通りに生きていければ何も問題はありませんが、場合によってはそうできない時もあるでしょう。
相手に良くしてもらっているのに、自分からは何もお返しが出来ないように感じることも出てくるかもしれません。
そのような時に、このべき思考を信じて生きてきた人は、「自分はとても駄目な人間で、すべきことができていない
どうしようもないやつだ」と思って落ち込んでしまうかもしれません。
世の中は本当にいろいろなことが起こるので、一つの考えや信念を、常に守って生きていくのは不可能なものです。
それでもその考えを全うしようとするとしたら、それは「極端な考え方のクセ」になっていると言えるかもしれません。
けれど自分の中ではごく当たり前、当然の考えなので、それがやや「極端」で「考え方のクセ」になっている
ことにはなかなか気が付きません。
もし、自分自身の生き方を振り返ったときに、自分の中に「~すべき」「~すべきでない(してはいけない)」という
考えに気づいたら、その考えが自分にとってどの程度強い(強固な)ものか。また、その考えを大事に持つことが、
自分の人生にとってプラスになっているか、マイナスになっているか、考えて見ると良いでしょう。
もちろん、マイナスになっているからと言って、その考えが間違っている、その考えを捨てろというのではありません。
その考えを、少しだけマイルドにできないか考えて見ましょう。
※「べき思考」へのアプローチの1つとして・・ 「認知再構成法」について
Lear MoreSNSと心理的なストレス
Twitter、LINE、 Facebook、 Instagram、いずれもSNSと呼ばれるサービスですが、
これらのいずれもを一度も見たことも使ったことも無いという人はおそらくもういないのではないでしょうか。
それくらい現代社会においてSNSは人々の生活に不可欠なものとなっています。
心理学の世界においても、現代社会に暮らす人々の心理について考える時、SNSの影響はもはや触れざるを得ない
ものと言えるでしょう。
特にSNSにあまり馴染みがない世代からすればSNSでのコミュニケーションはまだしも、そこで友達ができると
いった関係性の発展には疑問を感じる面もあるでしょう。
「SNSでしかやりとりをしていないけれど非常に仲の良い親友がいる」と言われても、それがどのようなものなのか
理解しきれないかもしれません。しかし、現在ではこのようなSNS上の関係性はごく自然なものとなっています。
藤野(2017)は20歳前後の若者を対象に、SNSが「居場所」になり得るのかについての研究をしていますが、
SNSでの関係性は現実に知り合っている友人との関係性と同等の「居場所感」を有することが明らかとなっています。
ただし、現実の「居場所感」の方は、それが強いほどメンタルヘルスを示す心理的Well-beingが高くなる一方で
SNSの「居場所感」はそのような関係性が見られませんでした。
また、都筑ら(2018)はLINE、Twitterに関しては知人からの受信の頻度が多くなるほど使用時の不満度が増大する
ことを示しています。Instagramでは利用頻度が多いほど不満度が上がるようです。
もちろんSNSには積極的に利用することで人生満足度を向上させる効果があるなど良い側面を示した研究もたくさん
あり、非常に有用なコミュニケーションツールであることは間違いありませんが、使用する頻度や時間が増大
していく中で次第に自発性や主体性が失われると、いわゆるSNS疲れに繋がるのではないでしょうか。
現実の人間関係と同様に適度な距離感が必要なのかもしれません。
しかしSNSは現実と同じくらいに「居場所感」が得られるからこそ、それがストレスに感じた時「見なければ良い」
「SNSを止めればいい」などと簡単に切り離したり距離を取ったりできないものであるとも言えるでしょう。
SNS上の対人関係のストレスにおいても現実の人間関係上のストレスと同様に、個人的な問題だからと抱え込まずに
他の誰かに相談する、話を聞いてもらうことを考えてみるのも良いのではないでしょうか。
引用文献;
藤野千種 (2017) SNS を介したインターネット上での心理的居場所と well-being の関連
神戸大学発達・臨床心理学研究, 16, 14-18.
都筑学,宮崎伸一, 村井剛, 早川みどり, 永井暁行, & 飯村周平. (2018).
大学生における SNS 利用時における心理的ストレスの研究―LINE, Twitter, Instagram の比較を通じて―.
中央大学保健体育研究所紀要, 36, 33-59.
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