悩みごとも、まずはAIに相談を?
皆さんは日常にどの程度AIを活用しているでしょうか?
家にはAIスピーカーが居て、朝の支度をしてくれて、明日の天気や、お気に入りの楽曲を
演奏してくれているかもしれません。床の掃除はAIを搭載したロボットがこなしてくれますし、
出かける時にはGoogle Mapが様々な交通手段を網羅した、最適な経路を提案してくれます。
外国語はGoogle翻訳やDeepL翻訳に任せれば、日本語以外でのメールの返信に悩む必要はまずありませんし、
英会話を習いたければ、AIが相手になってくれるアプリが24時間会話に付き合ってくれます。
現代社会に生活する中で、AIと全く関わらずに過ごすことはあり得ない状態になっていると言ってよいでしょう。
この文章はAIを使用せずに、「手書き」で書いていますが、AIに任せてしまえば、これよりももっと整っていて、
情報の多い魅力的な文章をきっと書いてくれるはず。
AIとの会話については、誰にでも触れるカジュアルなものだと10年位前からチャットボットが
登場していましたが、当時はまだ会話としてはぎこちないし限定的で、「AIと会話っぽい遊びができる」
以上のものではありませんでした。AI翻訳もまだまだ不十分で、公的なやり取りにそのまま使用するのは
とても危ういレベルでした。
しかし、それからの10年でAIは瞬く間に進歩して、あっという間に私たちの日常に溶け込んでいきました。
ChatGPTを代表としたAIの能力は素晴らしく、作業の手間を省いていくれる助手としてだけでなく、
日常的な相談相手、一緒に考えてくれる相手、は、これ以上ない存在となっています。
AIとの会話の利点はいくらでもありますが、まずは他の人に話すのにはちょっと躊躇するような事柄でも、
何の抵抗もなく話せるということです。
これは深刻な話と言う意味に限らず、例えば「今日のご飯どうしようかな」とか、
「今日休みだけど何にもすることないな。どうしよう…」といった、「こんな小さい個人的な話を、」
あるいは「こんなまとまってない話を、」わざわざ誰かに言うのもな…といった意味合いの内容であっても、
躊躇なく聞けるということです。
またもう一つの利点として、そういった思わず頭から漏れ出たようなつぶやきであっても
「ピーマンが余っているなら炒め物、マリネ、おひたしなんかどう?」
「一人の休日には映画マラソンなんかおすすめですよ!」みたいに、面倒くさがったりせずに、
即座に明確な答えを提供してくれることです。
もちろんもっと悩ましいストレスにも、AIは即座に何かしらの答えや提案を示してくれます。
例えば、「怒鳴ってくる上司が怖くて出社したくないんだけど、どうしたらいいと思う?」と尋ねると、
すぐに5種類の提案をしてくれます。その提案の中に「相手とできるだけ距離を取る」とあったので、
「でも直接やり取りすることが多いんだよね」と言えば、さらにより状況にあった提案をし直してくれます。
そうしていると、なんとなく冷静になって、対応の方法が浮かんできたりするものです。
それはまるで誰かを相手に相談しているようでもあります。
悩みごとはまずはAIに相談するという人は、これからも増えていくでしょう。
感情に共感してくれることすら、AIはとても上手です。AIに相談することで解決する悩みが増えれば、
それだけこの世界から悩みが減っていくことになります。
皆さんも、困ったことがあったら、ひとまずAIに相談してみるのはいかがでしょうか。
解決まで求めなくても構いません。ただどんなことに悩んでいるのか、今どんな気持ちなのかを、
AIのチャットに書いているだけで良いのです。そうしてみて、それでもなんだかうまくいかないな、
しっくりこないな、と思ったら、カウンセリングを検討してみてください。
すぐに「答え」を提案してくれるAIにない発見もあるかもしれません。
それが何なのかについては、実は心理学の世界でもどんどん明確には言えなくなっていっているのですが、
言葉にできない、していない、気づかずに覆って自分自身からも隠している何か、辛さ。
少なくともそういったものを、「答え」というより、一緒に探すことは、
カウンセリングでやっていけると良いかもしれません。
※上の記事の例ではClaude無料版(https://claude.ai)を利用しています。
Lear More『知ることと意識すること』
春の花というと、みなさんはどんな花を思い浮かべるでしょうか。
『キュウリグサ』という花をご存知ですか?
3~5月頃に咲く花で、道端や空き地、アスファルトの隙間、公園など身近なさまざまな場所で見ることができます。
花びらは淡い水色で、花の中心は黄色く、とても愛らしい花です。名前からは想像がつきにくい姿かもしれませんね。
『キュウリグサ』という名前の由来は、葉をもむとキュウリのようなにおいがすることにあるそうです。
ただ、これほど身近にある花ですが、あまり知られていないのではないでしょうか。
キュウリグサの花は2~3㎜程度ととても小さいのです。そのため、身近にはあるけれど
、なかなか気づかないかもしれません。
かくいう私も、『キュウリグサ』という花の存在を知るまでは、こんなに可愛らしい花に気づかずに
ずっと通り過ぎていました。しかし、花の存在を知ってからは、春は私の中ではキュウリグサの季節でもあり、
今ではすぐに見つけることができます。
意識すると、世界や日常の風景の見え方が変わります。
今まで見えていなかったものが、目に入るようになります。
それはカウンセリングでも同じです。
自分の体験や感情を言葉にしていくことで、今まで気づかなかった自分に気づくようになったり、
これまでとは違った見方や捉え方ができるようになったりします。
そうすると、自分自身が少しずつ変化していきます。
自分についてより深く知り、自分と向き合うことは、いつも新鮮で面白い体験になるとは限りません。
しかし、寒く厳しい冬を乗り越えて、春になると花が開くように、乗り越えたその先に、
必ず何か実りや得るものがあることでしょう。
Lear Moreカップル間の要求/撤退パターン
カップルや夫婦、パートナーとの関係がうまくいかない。
パートナーのせいで負担を強いられている、という悩みを持ってカウンセリングに来られる方がいます。
夫婦関係の問題は非常に古く、古代ローマの時代から夫婦喧嘩を守護する女神が居て、
古代ローマ人の夫婦は、お互いに不満が溜まってくると、二人で女神の祠に向かったと言います。
その女神の祠には「女神の前ではどちらか片方ずつしか口を開いてはならない」というルールがあったのだそうです。
しかしこれは、昔の人間を知るほのぼのとした逸話というよりは、それくらい古くからパートナー関係の維持は困難で、
人生の悩みの主題となり続けてきたことを示しているのでしょう。
最近の研究の結果としても、結婚一年目をピークにして、パートナー関係は歳を追うごとに、
残念ながら、基本的には悪化していくことがわかっています。
そこで近年、「カップル間の要求/撤退パターン」というパートナー関係のある悪循環に焦点を当てた
カウンセリングが注目されています。
カップル間の要求/撤退パターン
夫婦関係の研究では古くからよく知られた現象で、カップルの一方が他方に強く要求・批判し
もう一方がそこから守りに入ったり引き下がるというコミュニケーションのパターンのこと。
(三田村研究室 X @Mitamura_Lab より引用)
上の三田村研究室での一連のポストをお読みいただいた方が早いのですが、カップルが男女であった場合、
女性が要求側、男性が撤退側になることが多いことが、古くから確かめられてきたと言います
(それがどうしてなのかなど、こういったことが色々ポストされていて、学びになる上に
とても興味深いのでフォローおすすめ)。
いずれにせよ、このパターンが繰り返されていくと、次第に関係性が悪化していくという典型的な流れがあるようです。
さて、そこで関係性を改善していくために大切なのは、カップルの中でこのような構図ができていることは、
純粋にどちらか一方が「要求や批判ばかりで悪い」あるいは「逃げてばかりの態度が悪い」
ということではないと言うことです。
あくまで二人の関係性であって、そこに「どちらが悪い」は存在しないと言うことです。
全く異なる2つの態度ですがそこには1つの共通点があり、ある意味では二人で一緒に、その関係性を作っています。
その共通点とは、相手の表面的な感情に翻弄されていることです。
これまでの研究で分かってきていることは、カップルの関係性を改善していくときに、
どちらか一方だけが変化する、または「こういうルール作ってそれを守りましょう」、ということは
根本的な解決にはならず、お互いの内面、「本当はどういう気持ちがあったのか」ということをお互いに気が付き、
自然に相手への思いやりが浮かぶような関係性を構築することです。
お互いを見るときに、怒っているけどそれはどうしてだったのか、その背後にはどんな気持ちがあるのか。
黙っているけどその背後にはどんな気持ちがあるのか、そこに目を向けてみましょう。
「怒り」「無感情」とは全く違った気持ちが、そこにはあるのかもしれません。
Lear Moreどこに相談すればいいんだろう?
以前のブログで、ソーシャルサポートについての記事がありました。
誰かに相談すること、カウンセリングもソーシャルサポートの一つになるかと思いますが、
さて、いざ相談してみようと思ったものの、カウンセリングルームは何となく敷居が高い…、
カウンセリングルームが沢山あってどこがいいのか分からない…、そもそもどこに相談したらいいのか…
と迷われたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、身近にいる専門家の相談先について一例をご紹介したいと思います。どうぞご参考までに。
<小学生・中学生・高校生>
・スクールカウンセラーに相談する
小学校・中学校・高校には、スクールカウンセラーが配置されています。臨床心理士・公認心理師の専門の資格を持った
カウンセラーが配置されていることが多く、無料で相談できます。
・まもろうよこころ 厚生労働省のサイトで自分にあった相談方法で相談する
電話での相談、LINEやオンラインチャットなどでの相談窓口等の情報がまとめられています。
LINEなどでも気軽に相談できます。
・・・・・保護者の方・・・・・・
スクールカウンセラーや教育相談所に相談する
お子さんについてのご心配や対応について保護者からの相談にも応じています。また、児童生徒向けに
いじめやハラスメント、DVについてのSOS窓口を開設しているところ多いです。
神奈川県立総合教育相談センター
横浜市立教育相談センター
町田市教育相談
小田原
<大学生>
・学生相談室で相談する
大学には、学生相談室という無料で相談できる場所があります。多くの学生相談室では、臨床心理士・公認心理師の
専門の資格を持ったカウンセラーがお話を伺っています。相談の秘密は守られます。
・まもろうよこころ 厚生労働省のサイト で自分にあった相談方法で相談する
電話での相談、LINEやオンラインチャットなどでの相談窓口等の情報がまとめられています。
・・・・・保護者の方・・・・・
・学生相談室で相談する
お子さんの対応について保護者からの相談に応じている学生相談室もあります。保護者も相談の対象となっているか、
詳しくは各大学の学生相談室のホームページ等をご確認ください。
<企業や団体などにお勤めの方>
・社内の相談室のカウンセラーや産業医に相談する
社内にメンタルヘルス関連の相談窓口を設けている企業も多くなってきています。
・健康保険組合の福利厚生サービスを利用して相談する
お勤めの企業や団体が、メンタルヘルスに関する福利厚生サービスを提供している場合があります。
・『臨床心理士に出会うには』で相談先を探す
日本臨床心理士会が運営する検索サイトです。エリア、相談内容、臨床心理士の性別など条件を入れて検索することができます。
こまち臨床心理オフィスでは、遠方の方でもオンラインカウンセリングをご案内可能ですが、対面で受けてみたいという方は、
こちらでお住いの地域にある相談先を検索してみるのも良いでしょう。
*精神科・心療内科に通院中の方でカウンセリングを希望する場合は、まずは主治医にご相談ください。
困った時に、1人で抱えずに相談していけるのも大事な力です。
コンパッションはトーンに宿る
コンパッション(慈悲/思いやり)は、これまでも何度か取り上げてきましたが、
最近ではチームをまとめるリーダーにとっても大切なスキルと言われるようになってきました。
コンパッションには、
「相手にコンパッションを向ける」
「相手からのコンパッションを受け取る」
「自分にコンパッションを向ける」
以上3つの方向性があると言われていて「自分にコンパッションを向ける」ことを特に
「セルフ・コンパッション」と言います。セルフ・コンパッションが注目されることが多いですが、
3つの方向性を見てみると、リーダーにとってはそのどれもが大切なものであるように思われます。
チームと呼ぶと堅苦しいですが、相手に思いやりを持つこと、また、相手からの思いやりに気が付いて
それを大事に受け取ることなどは、夫婦関係、親子関係、友人関係などでもお互いのQOLを
高めるために大切な要素と言えるでしょう。
さて、そうは言っても「コンパッション」「慈悲」「思いやり」どの言葉をとってみても
なんとなくは分かるけれど、とらえどころがなく、「どうやったらおもいやりって示せるんだろう」と
悩んでしまうのではないでしょうか。
心理学の世界にコンパッションを取り入れたイギリスの心理学者ポール・ギルバート博士は
考え方を切り替えたり、これまでとは違った考え方をしたりすることを促すカウンセリングに
取り組んでいる時、バランスの取れた考え方を持てたはずのクライエントさんなのに
気持ちが全く変わっていないことに気が付きました。
実はバランスの取れた考え方を思い付きはしたものの、頭の中に響くその考えの“トーン”が
これまでのネガティブな考えの時のものと全く変わっていなかったのです。
トーンというのは不思議なものです。「大丈夫だよ」という言葉を一つとってみても
① 何度も何度も「大丈夫なの?」としつこく念を押されて怒って返す「大丈夫だよ!」
② まったく大丈夫じゃないけど後には引けないと思い詰めて絞り出す「大丈夫だよ」
③ 落ち込んでいる大切な人を慰めるために、心から伝える「大丈夫だよ」
頭の中で響くトーンは全然違うのではないでしょうか。
(『はぁっていうゲーム』と似ているかも知れませんね)
トーンだけでなく、表情も、声の大きさ、速さまだ違っているのではないかと思います。
コンパッションのワークをするときには、自分や、相手に言葉をかける時にも
トーン、表情、大きさや速さに注目して、思いやりを持ったトーンで話すように試していきます。
自分や相手にどんなふうに思いやりを示していいか分からない時には、
自分の言葉のトーンや表情に注目してみましょう。
そして、心から思いやりを持った自分だったら、どんなトーンで、どんな表情で話すかイメージしてみましょう。
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