ウェルビーイングってなに?②
Well-beingの構成要素は現在様々な理論が出されていて、多くの心理学者がどうしたら
Well-beingな状態になることができるのか考えています。
前回は心理的Well-beingを高めていくために必要な5つの要素としてPERMAを紹介しましたが、
もう1つ、6つの要素として捉える考え方もあります。
環境制御力:周りの機会をうまく利用して、環境に対応できている感覚。
個人的成長:成長できてる!と言う感覚。
人生の目的:人生に目的があり、これまでの人生に意味を感じられる。
自律性:周囲に流されずに自分で決められる感覚。
自己受容:自分の過去や、悪い点も受け入れることができている。
積極的な他者関係:信頼できる関係がある。
PERMAとよく似ていますが、細かく見ていくと違う部分も結構あります。
特に「自己受容」と言う言葉が含まれているのは違いかもしれません。
上の6つの要素は、どれも1つでもあれば人生の支えになるようなものに思えます。
これ全部を完全に満たさなければいけない!そうでないとWell-beingじゃないから良い人生とは言えないんだ!
と言いたいわけではありません。
これら6つの側面から自分の人生を見た時に、「今の自分にはこれが足りないな」と
特に感じるものがあるかもしれません。だとしたら、それを増やすことを考えてみましょう。
例えば「個人的成長」をあまり感じられていない場合には、あくまで「個人的」で構いませんので
成長を感じられるような活動を取り入れてみることを考えましょう。
それは仕事に関することかもしれませんし、新しい楽しみを見つけることかもしれません。
反対に、これらのどれから多すぎてはいないかと考えてみることもできます。
「個人的成長」を過剰に意識しすぎることは高すぎる理想に拘って非現実的な目標を設定してしまったり、
過去のネガティブな体験を受け入れられずに「自己受容」が困難になったりします。
つまり「いつも6つの要素を満たさなければ!」と意識して生きるのではなく、生活していて
「Well-beingじゃないな」と感じた時に、6つの要素のどこかが足りなくないか?/過剰になっていないか?
と見てみるのです。そうすると、自分が今どんなことに取り組んでいけたらよいか、
どんな決定をしたら良いかが見えてくるかもしれません。
当オフィスでは、2月から「精神科にかかるほどではないけどWell-beingを向上させたい」
「精神科の治療を卒業したけど再発予防に向けたメンタルトレーニングをしていきたい」という方に
向けた、オンラインプログラムを開始しました。(こちらからご覧ください)
関心のある方はお気軽にお問い合わせください。
毎週/隔週30分、6回のプログラムを通してWell-beingにスポットを当てた生活を体験してみましょう。
また、初回セッションも含めた完全リモート(Zoom)でのカウンセリングの受付も併せて開始しました。
ご相談内容によっては対面でのカウンセリングをお勧めする場合がございます。
詳しくはHPからお問い合わせください。
Lear MoreWell-being(ウェルビーイング)って何?
富山県でウェルビーイングを7色の虹として表現して成長戦略を打ち立てたり
ベネッセが「ウェルビーイングラボ」事業を始めたりと、昨今のSDGs、もといサステナブルな
社会への関心の高まりからWell-beingと言う言葉がとても注目されています。
心理学でwell-beingと言うときは「心理的Well-being」を指すことがほとんどですが、
これはRyffが1989年に提唱した言葉で「人格的成長・人生における目的・自律性・
環境制御力・自己受容・積極的な他者関係の6次元からなる、人生全般にわたるポジティブな
心理的機能(西田,2000)」と、結構複雑で一言で言い現わしにくい概念なのです。
(富山県では「真の幸福」と一言で表現していますね。ニュアンスとしては確かにそういうこと
なのでそっちの方がわかりやすいですね)
とにかく「ウェルビーイング」は心理学の世界でも以前から注目されていて、どうすれば
ウェルビーイングを高めて維持することができるのかと多くの心理学者が研究を重ねてきました。
中でも近年ウェルビーイングのための5つの要素が提唱されていて、それぞれの要素の
イニシャルを取って「PERMA」と呼ばれています。
これらの要素が日常生活を通して体験されていくと、ウェルビーイングな人生になっていくということになります。
また、PERMAをより促進するために大事だとされているものが「レジリエンス」です。
「状況が良くても悪くても、しなやかな対応を可能とする力(日本ポジティブ心理学協会HP)」とされる
レジリエンスは、認知行動療法を通して鍛えられると言われています。
PERMAを実現するのは簡単には思われないと思いますが、日々わずかな意識と行動の変化で
現在と違ったウェルビーイングな日々を送ることができるかもしれません。
また、近年ではPERMAを含めてウェルビーイングを高めるための「ウェルビーイング療法」という
心理療法も開発されていたりします。
当オフィスでも準備中ですので、関心のある方はチェックしてみていただければと思います。
引用文献:
西田裕紀子. (2000). 成人女性の多様なライフスタイルと心理的 well-being に関する研究. 教育心理学研究, 48(4), 433-443.
一般社団法人 日本ポジティブ心理学協会 ホームページ
Lear MoreWAIS・WISCは何をする検査なの?発達障害のときに使われるのはなぜ?
近年よく「発達障害の検査をしてほしい」というお問い合わせをいただきます。
当オフィスでは「WAIS・WISC」は、残念ながら発達障害を判別する検査ではなく、
行っても発達障害かどうかは分かりません。
WAISはウェクスラー式知能検査成人版の略で、子ども(16歳未満)版がWISCです。
定期的にアップデートされていて、現在の最新日本語版は第4版(WAIS-Ⅳ)です。
知能検査なので知能がIQとして算出されます。
クイズ番組やアプリゲームで「これができたらIQ120」なんていうのを目にすることが
ありますが、あれは完全なお遊びで、IQという言葉だけ借りてきて適当につけているのでしょう。
漫画にも「IQ200」などのキャラクターがよく出てきますし、IQは
「絶対的な頭の良さを示すスゴい指数」のように思われているところがありますが
実際には「知能検査の数値」であり、それ以上でも以下でもありません。
さて、WAIS-ⅣはIQの他に「言語理解」「知覚推理」「作動記憶」「処理速度」
という4つの合成得点が出てきます。IQはそれらを総合して算出された数値です。
IQは自分の全体的な能力が周囲と比較してどの程度の位置にあるのかを知る目安として
有用ですが、近年では、上記4つの合成得点それぞれの点数の差、つまり「バラつき」に
注目することが増えました。このバラつきから、自分の得意な能力と苦手な能力を
知ることができます。それを参考にして、得意な能力を活かしたり、苦手な能力を
カバーしたり、どこで助けを求めたらいいのか理解しやすくなったりします。
この「バラつき」は持って生まれた脳の特性なので、「苦手な能力を伸ばす」
という目的で見られることは少ないです。
ASDやADHDなど発達障害の方に見られるいくつかのバラつきの傾向が注目されてから、
発達障害診断の参考としてWAISを取られることも増えました。
そのため「WAIS=発達障害かどうか見る検査」として知られるようになったのかも
しれませんが、実際には上述のとおり診断するために作られた検査ではなく、
むしろ診断が出た後に自分の特性を理解して工夫したり、周囲に理解してもらって
的確な支援につながりやすくなるための検査と言えるでしょう。
当オフィスでは,現在は原則として精神科・心療内科におかかりの方で、情報提供書を
お持ちの方に限りWAISを行っております。
検査についての詳しい結果は主治医には報告しておりますが、解釈の難しい数値的な
データや、細かなデータは支援の専門家以外にはお渡ししないことにしております。
ご容赦いただけますようお願い申し上げます。
Lear More不眠とべき思考
睡眠についての悩みはとても日常的なものです。
健康な時でもその日よく眠れたかどうかで一日の快適さが違うように感じますし、
よく眠れない日が続くとそれだけで憂鬱になるものです。
スマホのアプリストアに並ぶ多種多様な睡眠アプリの数を見ると、いかに多くの人が
良い睡眠を切実に求めているかがわかります。
実際に短い睡眠や長い睡眠(大体6~8時間が適度な時間とされています)は、
様々な健康リスクとの関連が指摘されています。
生物には時間によって体内環境を変化させる体内時計があることが知られており、
良い睡眠はこの体内時計と密接に関係しています。夜になったら明るい光を浴びないこと、
スマホなどを見るスクリーンタイムは減らすこと、そして、朝起きたらまず日の光を
浴びること、などはよく聞くアドバイスではないでしょうか。
平日は短時間しか眠れない分、休日にまとめて寝たりして平日と休日で睡眠時間の
リズムが大幅にずれることは「ソーシャル・ジェットラグ」と呼ばれ、体内時計を
乱すことが分かっています。具体的には体内時計が後退して休み明けに起きられなかったり、
眠気が取れなかったりします。
しかし、眠るというのは難しいもので、短い睡眠に健康リスクがあると言われると
「最低でも6時間は寝なきゃいけないのに!」と焦ってしまい、かえって眠気が逃げて
行ってしまうものです。
「べき思考」という考え方(認知)のクセを以前紹介しましたが、切実に眠りたいと願う人ほど
眠りに対する「べき思考」、つまり「最低でも6時間は寝るべき」という思考に陥りやすくなります。
6時間を切ってしまった後は「最悪でも5時間は…」と思っては、結局5時間を切っても焦るばかりで
眠気がやってこない場合もあるかもしれません。
よりよく眠るコツとしては、20分経っても眠気が来ないようなら、いったん起きてしまうのが良い
と言われています。眠りに対するべき思考から意識を離すために、読書やホットミルクを飲むなどの
激しくない軽い活動をしてみましょう。この時も部屋を明るくしすぎたり、スマホを見たりするのは
避けた方が良いでしょう(とはいえ中にはスマホを見ている方が入眠しやすいとおっしゃる方もいます。
悩みから意識を離す役に立つなら良いのかもしれません)。
そうして気持ちがリラックスしたり眠気を感じたら、ゆっくり布団に戻ってみます。
理想的なリズムで生活できたらそれは一番良いかもしれませんが、理想をいきなり掴もうとしても
体内時計はすぐには変わってくれません。そんなときには自分が「7時に起きるべき」「22時に寝るべき」
といったべき思考に捉われてしまっていないか振り返ってみましょう。
そうして、まずべき思考から離れて、「無理なく起きられる時間」「無理なく布団に入れる時間」を
設定してみましょう。本当に無理の無いくらいが良いでしょう。
それができたら少しずつ、20分や30分ずつ、理想の時間に近づけてみましょう。
Lear More不安、不満、怒り などネガティブだと思われている感情の心理と重要性について
皆さまは日常生活で不安や不満、怒りと言った感情を感じることはあると思いますが、これらの感情は
普通に生活を過ごしていく上ではとても厄介に感じられる方が多いと思います。
基本、そういった感情は不快なものであり、できれば感じたくないものです。
カウンセリングに来られる方にも、不安や不満、怒りを「無くしたい」と相談される方は非常に多いです。
確かに強すぎる不安は心を萎縮させてしまい、何かをしようと思っても怖かったり不安になってできなく
なってしまうことがあります。
学校や仕事に行くのが不安だったり、電車に乗るのが怖かったりして、外出するのが不安になって
行動できなくなることがあります。
また、不満と怒りといった感情は、強すぎると文句が多くなりすぎたり、怒鳴ったりといった
自分でも思ってもないような行動をとってしまい、自分の行動が思ったようにコントロールできなく
なってしまうことから、周囲との人間関係に摩擦を生じさせてしまい、時には大切な人間関係を破壊
してしまうかもしれません。
ただ、こういった不安や不満、怒りと言った感情は人間にとって大切な感情であり、
なくてはならないものだという側面もあります。
例えば、不安が無くなってしまうと、事故や詐欺に遭わないように注意すべき
場面でも、そもそも警戒しようとしないため、気を付けることがやりにくくなってしまいます。
また、不満や怒りといった感情は、満たされていない欲求を満たしたいから頑張ろうといったエネルギーが
わいてきますし、現状への強い怒りが改革や変化への大きな原動力になっているのは歴史が証明しています。
つまり、自動車に例えて言えば、不安はブレーキの役割を果たし、不満や怒りがアクセルの役割を果たしているので、
どちらが無くなっても自動車としては機能しなくなることから、どれだけ重要かと言うことはわかっていただけると
思います。
ただ、不安が強すぎたり、不満が強すぎたりすると、ブレーキを踏みすぎて進まなかったり、
アクセルを踏みすぎて事故を起こしてしまう状態になってしいまい、問題になると思われます。
さらに、強くアクセルを踏みながら強くブレーキを踏むといった矛盾した状態ではエネルギーを消耗する割には
問題解決が進まず、消耗するが動けないといった状態になってしまうことがあります。
こういった不安や不満、怒りと言ったことが現実的かどうかを第三者の専門家を交えて現実的に検討していき、
物の見方や考え方、行動等を修正していくのが認知行動療法であり、そういった感情がどういったところから
来ているのか探求をしていくのが精神分析的心理療法と言っていいのではないでしょうか。
どちらのやり方にも一長一短があり、どちらが良いとは一概に言えませんが、完全にどちらかの方法で
カウンセリングを進める場合もあるのですが、それぞれの要素を取り入れて行っていく場合も多いと思います。
不安や不満、怒りといった感情は大切なものなのですが、強すぎたり、足りなかったりすると
問題になってくるものであり、それに対するカウンセリング的アプローチは多種多様で、
ケースバイケースでの対応になります。
こまち臨床心理オフィスではそういった多種多様なニードにお応えできるように色々な立場の
心理の専門家が在籍しています。
感情的な問題で困っていると感じているのであれば、お気軽にご連絡していただけたら幸いです。
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