考え方のクセ②「レッテル貼り」
以前、認知行動療法の中でよく取り上げられる「問題になることが多い考え方のクセ」
のひとつとして「べき思考」をご紹介しましたが、今回は「べき思考」と同じく取り
上げられることの多い「レッテル貼り」という考え方のクセについてご紹介します。
レッテルは商品に貼るマークやラベルみたいなものですが、「レッテルを貼る」
という熟語になると「主観に基づいて一方的に評価・格付けしたり、分類したりすること」
の意味になります。特に“主観に基づいて”とか“一方的に”という言葉にはとても頑なな響き
があります。
「レッテル貼り」という考え方のクセは、特段変わったことではなく、「あの人は」
とか「あの人はB型だから」とか、私たちは普段様々なことにごく自然にレッテル貼りを
しながら人生を過ごしています。
そうすることで物事をシンプルに理解することができるという便利な面さえあるかも
しれません。ただ「レッテル貼り」があまりにも極端になると、人生の中で自分自身を
苦しめることが増えていきます。
小学生の頃からテストが苦手で苦しんできた人が、その原因を「自分がバカだから」
だと考えたとします。その人が、もしそれからの人生で自分が失敗したり上手くいかない
ことがあった時にいつも「自分がバカだからだ」と考える様になったらどうでしょう。
小さい頃から友人関係が上手く築けずにいた人が、新しい環境で人と接した際に
「自分はコミュ障だから人間関係を作ることなんてできないだろう」と自分に言い聞か
せたりすることもあるかもしれません。これらは自分への「レッテル貼り」の例です。
「レッテル貼り」の問題点は、それを行ったとしても、ものごとの原因をシンプルに
捉える(それがたとえ間違った捉え方であったとしても)役には立つかもしれませんが
問題を解決、改善するためには何の役にも立たないことが多いことです。
特に、ある一つのレッテルに妙にこだわってしまい、すべてのものごとの原因を例えば
「自分がバカだから」「自分が劣った人間だから」というところのみに見出した場合、
多くは「だからこうしてみよう」という考えにはならずに「○○な自分はどうしたら
いいんだ」といった焦りや「○○だからどうしようもないんだ」という辛い諦めにしか
繋がりません。
もっと頑張れと言われたって「どうせ自分はバカだからそんなことしても無駄だ」と
感じてしまうでしょう。
他の考え方のクセも同じなのですが、「レッテル貼り」は自分にとってはあまりにも
当たり前で自分の人生観に浸透しているため、自分がレッテル貼りをしているという
ことに気が付いていないことも多いのです。
認知行動療法では、まず自分がどんなレッテル貼りをしているのか、と言うことに
客観的に気が付けるようになることを目指します。
「どうすればそれを無くせるか知りたいのに」と思われるかもしれませんが
「レッテル貼りは良くないから直さなきゃいけない!」と思うと、それはそれで苦しく
なってしまいます。
まずは自分のクセを知ることを大切にしていきましょう。
Lear Moreおうち時間で取り組むことができる認知行動療法
コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言から1か月が過ぎ、外出自粛の徹底によって
新たな感染数は全国的に徐々に減少してきているようです。それに伴って5月14日には39県で
緊急事態宣言が解除され、21日には残った特定警戒の都府県においても宣言が解除される
可能性が出てきました。
しかしコロナウィルスが根絶されたわけではないですから、宣言が解除されてもすぐさま
生活が以前のような状態に戻るという訳にはいかないかもしれません。
外に出ることができない、人に会うことができない、これまで心の健康のために不可欠だった
様々な活動が制限される中で、ストレスにどうやって対処したらよいでしょうか。
当オフィスでは認知行動療法をはじめとしたカウンセリングを行っておりますが、まだまだ外出
するのが難しい場合には、以下のような自宅でできる認知行動療法という選択肢もあります。
まずは読書と言う方法があります。とくに認知行動療法は一般の方でも手に取りやすい沢山の本が
あります。あまり難しそうな本よりは,簡単に読めそうなものをまず手に取ってみてはいかがでしょうか。
変わったものだと認知行動療法を取り組めるゲーム風アプリがあります。海外で開発されたスマホなどで
プレイできるアプリで、RPGをプレイしているような感覚で認知行動療法を学び、取り組むことができます。
2000円とアプリとしてはやや割高感があるかもしれませんが、認知行動療法にとっつきにくさを感じて
おられた方は試してみてもよいかもしれません。
うつ病の認知行動療法に取り組みたい方用のSNSというものもあります。
認知行動療法をベースとした、うつから抜け出すための様々なコンテンツが利用できます。
共感のレスポンスなどコミュニティ内で励まし合えるSNSならではの要素も含んでいるため、
同じように苦しんでいる方と一緒に取り組んでいる感覚を得ることができます。
このように、家に居ながら取り組める認知行動療法というのも色々あります。
実際には、ツールがあっても自分一人で認知行動療法に取り組むのはなかなか難しいものです。
それは、ジムに通わずに完全に一人で効果的な筋トレを継続する難しさと似ているかもしれません。
ですから、「きちんとやって効果を出さなければ」と思って始めるよりは、「自分に合っていたら
取り入れてもいいか」くらいの軽い気持ちで、おうち時間のストレス対処法のひとつとしてみるのが
良いかもしれません。
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考え方のクセ①「べき思考」
認知行動療法は、問題やストレスを増大させている認知(=考え方)の癖、行動の仕方の癖をみつけて
それをよりストレスや問題の少ないものへと変化させていく方法です。
認知行動療法についてご存じの方は「認知の歪み」という言葉をご存じかもしれませんが、
これは「問題になることが多い考え方の癖」ということです。
その中の1つが「べき思考」です。
「ああすべきだ」「こうするべきだ」「こうするべきではない(してはいけない)」と、「べき」と言う
言葉を使って自分の行動や相手の行動を批判したり、縛ったりする考え方です。
例えば「人に良くしてもらったら、自分もそのようにして返すべきだ」という考えはとても
素晴らしい考えです。
みんながそのように考えて生きていくことができれば、世の中はもっともっと良くなっていくことでしょう。
しかし、もしこの考えが「べき思考」になって自分の中の絶対に守らなければいけないルールと
なっていたらどうでしょうか。
常にこの考えの通りに生きていければ何も問題はありませんが、場合によってはそうできない時もあるでしょう。
相手に良くしてもらっているのに、自分からは何もお返しが出来ないように感じることも出てくるかもしれません。
そのような時に、このべき思考を信じて生きてきた人は、「自分はとても駄目な人間で、すべきことができていない
どうしようもないやつだ」と思って落ち込んでしまうかもしれません。
世の中は本当にいろいろなことが起こるので、一つの考えや信念を、常に守って生きていくのは不可能なものです。
それでもその考えを全うしようとするとしたら、それは「極端な考え方のクセ」になっていると言えるかもしれません。
けれど自分の中ではごく当たり前、当然の考えなので、それがやや「極端」で「考え方のクセ」になっている
ことにはなかなか気が付きません。
もし、自分自身の生き方を振り返ったときに、自分の中に「~すべき」「~すべきでない(してはいけない)」という
考えに気づいたら、その考えが自分にとってどの程度強い(強固な)ものか。また、その考えを大事に持つことが、
自分の人生にとってプラスになっているか、マイナスになっているか、考えて見ると良いでしょう。
もちろん、マイナスになっているからと言って、その考えが間違っている、その考えを捨てろというのではありません。
その考えを、少しだけマイルドにできないか考えて見ましょう。
※「べき思考」へのアプローチの1つとして・・ 「認知再構成法」について
Lear More“不安”と認知(考え)
不安の方程式
不安はどんな時に大きくなるのでしょうか。不安の強さを導き出す「不安の方程式」をご
紹介します。
例えば「もし出かけた先でライオンに遭遇したら」と考えてみましょう。
ほとんどの人はライオンには力でも足の速さでも勝てないでしょうから、本当に遭遇してしまったら
脅威は100とか、とても高くなるかもしれません。けれど、日本の街中にはライオンはまずいませんから
生起確率は低く「そんなことありえないよな」と思うのではないでしょうか。
けれど、これがもし「自宅近くの動物園からライオンが脱走した」というニュースの後であれば
生起確率がぐっと上がって、とても不安で出かけられなくなるかもしれません。
一方で、そんな風にこの方程式の分子がかなり高かったとしても
「自分は足が速いし、雄ライオンは怠け者だし、一目散に逃げれば逃げ切れるだろう(対処可能性)」とか
「警察もたくさん来ているからきっと守ってくれるだろう(サポート資源)」という風に思えれば
分母が大きくなる分、不安は小さくなるでしょう。
この方程式はそれ以外にも、嫌いな虫に遭遇する不安、事故に巻き込まれる不安、皆の前で恥をかく不安、
などに関しても同じです。
いつも不安が高い人をこの方程式で考えると、実際よりも分子の数字をかなり大きく、また、分母の数字を
かなり小さく見積もってしまう状態にあるのかもしれません。つまり“認知=考え方” が影響しているのです。
今、ご自身の不安に思っている事柄を思い浮かべてこの方程式に当てはめてみましょう。
どのくらいの数字になるでしょうか?
不安と認知行動療法
不安に対する認知行動療法は、このような不安の脅威や実現可能性を過剰に大きく見積もってしまうことや
それが起きた時の対処可能性を過剰に小さく見積もってしまう考え方のクセを、よりバランスの取れた
考え方にしていくための方法です。
もし、ご自身の不安に思っていることを「不安の方程式」に当てはめた時に「分子がすごく大きな数字になる」
また「分母がほとんどなくなってしまう」という方は、考え方=認知の観点から
ご自身の不安を見つめ直してみることが役立つかもしれません。
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認知行動療法 その2
前回「認知行動療法 その1」の続きです。
認知行動療法には宿題があります
認知行動療法ではセッションの終わりに持ち帰る宿題について考えます。
そして次回のセッションまでの間にご自身で取り組んでみます。
これは単にセッションの中だけでCBTを扱うのではなく、CBTを日常生活の中に
持ち帰っていただくことで自分自身のスキルとして使えるようになることを
目指しているからです。
もちろん、無理なものではなく取り組めそうな範囲の宿題を考えてそれを実行してみます。
失敗や成功よりも、それをしてみるとどんな結果になるのか実験のようなつもりで取り組んでいきます。
例えばこのような方に…
・物事を悲観的に考えたり、自分を責めてしまうクセを直したい。
・不安や緊張が強くなって普段のようにリラックスできない。
・復職準備の一環として復職した際の心構えを作りたい。
・苦手な人がいるがどのように対応して良いかわからない。
・薬物療法で良くなってきたが辛い気持ちに自分で対処できるようになりたい。
・薬を減らしていきたい。
集団認知行動療法とは
集団認知行動療法(Cognitive Behavior Group Therapy:CBGT)は、CBTを複数人の
グループメンバーと一緒に行っていく方法です。
似た悩み事を抱えている人と問題を共有し、一人では考えつかない解決策に
気づけることは、CBGTの大きなメリットの一つです。
当オフィスでは、主にうつ病、うつ状態の方を対象としたCBGTを3~6名という
比較的少人数の固定メンバーで行っております。
毎週1回90分、全13回のセッションの中では、自分自身で認知行動療法に
取り組みながら時にはメンバー同士で検討や発表をし合い問題の解決に向けてみんなで考えていきます。
個人でじっくり取り組みたい、グループで話し合ってみたいなど、様々なお考えがあることと思います。
個人、集団それぞれに特徴があるので、どちらが自分に合っているかわからない、
と言う方はぜひお気軽にご相談ください。
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